朝日新聞の一面にこのような記事が載りました。
家で動画見て予習、「反転授業」試行へ 佐賀・武雄市
【編集委員・氏岡真弓】佐賀県武雄市教育委員会は小中学生全員に1台ずつ配るタブレット端末で、「反転授業」に取り組む方針を決めた。子どもは授業の動画を入れた端末を持ち帰り、家で宿題として予習。実際の授業ではわからない点を教え合ったり、議論しながら応用問題を解いたりし、学力の定着を目指す。11月に小学校1校で試行し、順次広げる。
反転授業は、これまで学校の授業で教えてきた基礎的な内容を家で学び、家で取り組んでいた応用課題を学校で学ぶよう「反転」させる方法だ。米国で2000年代から急速に広がった。日本では教員個人が取り組んでいる例はあるが、自治体単位で導入するのは初めて。(樋渡市長のブログより)
自分の感想は・・・うーん。
◎共感する点
何かを改善しようという武雄市長の試み
ICTを積極的に導入しようという姿勢
生徒中心の学校運営
〇うーんな点
教師のポジションと負担
佐賀県の公務員としての教員に武雄市だけが突出した現状の地域格差を受け入れられるのか
反転学習の難しさ
できる子への対応
公教育の公平性
最初に言っておきますが武雄市のチャレンジャースピリッツには頭が下がります。決してそのことを批判しているわけではありません。
これは実際自分が個別指導で個別対応をやっていて思うことで経験者の意見として聞いて欲しいんですけど。
まずは教師側の負担ですね。
個別対応・・・本当に大変ですよ。
例えば、生徒の
現状の学力レベル、学習分野での過去の傾向、現状の進度、現在の精神状態、学校や部活その他の環境・・・そして目標
これを加味して宿題を出すわけなんですが・・・
宿題が適切でなかった場合、生徒がやってこなかった場合、次の授業はほとんど潰れます。
今までは教えれば終わりだった学校の先生が100%にしなければいけないという責任を負うわけですから大変なご苦労だと思います。
また、映像授業を撮影する際の時間・それの準備にかかる時間。教師の負担は大きいと思います。
それが仕事だから当然と思われるかもしれませんが、私は通常の授業準備と「形が残るもの」としての授業準備が一緒だとは思えません。
間違えたら何テイクも撮り直すでしょうし、それが他学区の教師との不公平にならないかという点に疑問が残ります。
教師の残業代は最初から給料に含まれているというのは事実ですが、だからといって時間効率を無視して働かせるわけにはいかないでしょうし。
映像授業を塾や教材会社から買ってくるのであれば、学校の先生の存在価値は一層希薄になることでしょう。
えーと・・・実は・・・当校でもICTを用いた「反転授業」といわれるものをやっております。
今まで・・・あまり気にしたこともありませんでしたが(苦笑)
PCを使って自宅で映像学習させる形は高校数学の予習だけですが、かなり学力レベルの高い生徒限定としています。
学力レベルの低い生徒には「未習範囲の予習段階」で「既習範囲の復習部分」で躓くことが多く、時間対効果が薄いため実施しておりません。
「嘘をつかない・ごまかさない・約束を守る」
といった学習姿勢が身に付いた生徒には家庭での予習を提案しますが、それができるようになるにはそれなりの時間と経験が必要ですので。
そして最大の疑問は目標設定。
市教委の目標は「おちこぼれを作らない」ことかもしれませんが、できる子はどうなるんでしょうね?
できない子にばかり注力して、できる子はほったらかしといった「個別指導」も私塾では見かけますが、できる子に出す宿題もその子に合ったものにするのであれば、当然、疑問や間違いはでてくるわけです。それを学力レベルの高い保護者が教えてしまったら、あるいは塾が教えてしまったら・・・
先生って尊敬されますかね?
学校っていりますかね?
塾や予備校の世界で言えば
そこから驚きや感動をともなう「さらにレベルの高い指導」をするのが集団指導の講師でしょうし、一対一でできるようになるまで教えるのが個別指導の講師でしょう。ウチはどう教えるかということより、どう結果を出すかということに特化しておりますので、どちらとも言えませんが。
どっちを目指すのでしょうね?
公教育の多様性は機会の平等を犯しかねないので、あまり歓迎いたしません。
現状でも先生の当たり外れという負の多様性はあるわけですから。
教育学部出身の自分としては、その状態で「学校の先生」に何ができるのかを見てみたい気がします。
そこにこそ究極的に公教育が目指すものがあるような気がするのですが。
授業なんて映像授業に任せてしまえばいいんだ!俺は教育をやる!!
そんな先生が出てくることを切に願います。