平成25年度 1級建築士設計製図合格発表
平成25年度1級建築士設計製図試験の合格発表について
設計製図合格率40.8% ≪昨年より0.9%ダウン≫
最終合格率12.7% ≪昨年より0.3%アップ≫
1.受験者答案の分析から見えてくる採点基準についての考察
試験機関からは、合格発表と同時に、後述する「採点のポイント」が公表されましたが、どのような答案が減点となったかを示す具体的な「採点基準」については公表されていません。
日建学院では、この「採点基準」こそが試験対策の要と考え、それを明らかにするため、独自の分析を行っています。
下記の分析結果は、受験者が試験直後に復元した答案の中からサンプルとして150人を抽出し、答案の計画内容と合否結果とを照らし合わせ、詳細に分析した結果から見えてきた、日建学院独自の「採点基準」です。サンプル150の合格率は55.3%でしたので、それを下回る数値の計画には、何らかの問題や減点があったものと考えられます。
●主要なグリッド計画
「宿泊室A(6室)・B(2室)・C(2室)」が要求され、眺望を考慮すると、南側・北側又は東側に配置することになるが、どのグリッドを採用するかがポイントとなりました。受験者答案を分析すると、東西に7スパンを計画できる「6m×7m」の合格率が59.6%と高い結果でした。
計画内容 | 受験者の割合 | 合格率 | サンプル合格率との差 |
---|---|---|---|
①6m×7m | 66.0% | 59.6% | +4.3% |
②7m×6m | 11.3% | 47.1% | -8.2% |
③7m×7m | 19.3% | 41.4% | -13.9% |
④その他 | 3.3% | 80.0% | +24.7% |
【採点基準についての考察のまとめ】
受験者答案の分析から見えてくる採点基準について、どのような用途でも共通する、合否を分ける重点項目は次のように考えられます。
●ゾーニングと動線計画
設計製図の基本は、ゾーニングと動線計画です。今年の課題では利用者ゾーンと管理サービスゾーンを明確に分離してゾーニングし、動線交差のない計画がポイントとなりました。
●適切な構造計画、設備計画
新試験制度においては、構造計画、設備計画が合否に大きく影響することが明らかです。
●「計画の要点等」の適切な記述
新試験制度において、「計画の要点等」の採点のウェイトが高いことが想定されます。計画の要点等については、例年テーマを具体的に絞った出題が目立ち、記述力が合否に大きく影響する結果となっています。
≪次年度ガイダンスのお知らせ≫ |
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「主要なグリッド計画」の他、「研修部門のゾーニング」や「浴室の配置」等、ポイントとなる20項目程度の分析を行っています。この結果を把握して次年度に向けて学習することが重要です。各校で実施します「次年度ガイダンス」で、詳しく説明致しますので、是非多くの方のご参加をお待ちしております。 |
2.試験機関から公表された「採点のポイント」と「採点結果の区分」
合格発表と同時に試験機関から公表された「採点のポイント」は次のとおりです。
-
空間構成
①建築物の配置計画
②ゾーニング・動線計画
③要求室等の計画
④建築物の立体構成等 -
意匠・建築計画
①要求室の機能性・快適性等
②図面表現等 -
構造計画
①構造種別、架構形式及びスパン割り等の計画
②梁伏図及び部材の断面寸法等 -
設備計画
①アトリエにおける空調方式、空調機の設置位置及び吹出口・吸込口の計画
②建築物の省エネルギーの計画
③受変電設備、空調室外機及び浴室用の給湯・ろ過設備の計画 -
設計条件・要求図面等に対する重大な不適合
① 「要求図面のうち1面以上欠けるもの」、「計画の要点等が完成されていないもの」又は「面積表が完成されていないもの」
② 地上2階建てでないもの
③ 図面相互の重大な不整合(上下階の不整合、階段の欠落等)
④ 「建築面積が1,050m2以下でないもの」又は「床面積の合計が1,500 m2以上、1,800 m2以下でないもの」
⑤ 次の要求室・施設等のいずれかが計画されていないもの
セミナー室A、セミナー室B、セミナー室C、アトリエ、和室、宿泊室A(6室)、宿泊室B(2室)、宿泊室C(2室)、浴室、エントランスホール、食堂、事務室、設備スペース、エレベーター、便所(共用部分に計画されていない)
⑥その他設計条件を著しく逸脱しているもの続いて、平成22年度から25年度までの採点結果の区分(ランク分け)の状況を示します。
ランクⅠ:「知識及び技能」を有するもの
ランクⅡ:「知識及び技能」が不足しているもの
ランクⅢ:「知識及び技能」が著しく不足しているもの
ランクⅣ:設計条件・要求図面等に対する重大な不適合に該当するもの
*「知識及び技能」とは、一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」をいう。今年度は、ランクⅣの割合が12.7%となっています。新試験制度が始まって5年間、ランクⅣの割合は1割程度となっており、課題文の読み落とし等によりランクⅣの重大な不適合に該当する答案の割合をおさえる配慮があるものと思われます。
ほとんどの受験者は、試験機関からは公表されていない細かな項目に関する採点基準によって、合格となったランクⅠと、不合格となったランクⅡ、Ⅲに区分されたことになります。前述したとおり、その「採点基準」こそが試験対策の要となるわけです。
また、ランクⅡの割合が27.3%であり、ランクⅠに続いて2番目に割合が高くなっていることから、細かい採点基準の中で1点・2点を競う試験になっていることが分かります。
3.今年度学科合格者と学科免除者の設計製図試験合格率の比較
今年度学科合格者と学科免除者(23年度より前年及び前々年の学科合格者の合計)の設計製図試験合格率は次のとおりです。合格率の差が12.1%となっています。なお、試験機関から前年及び前々年を分けた合格率は発表されていません。
今年学科合格者と学科免除者の設計製図試験合格率の比較
全国 合格率 |
①今年度学科合格者の 合格率 |
②学科免除者の合格率 ※23年より前年及び |
②-① 合格率 の差 |
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合格者 /受験者 |
合格率 | 合格者 /受験者 |
合格率 | |||
25 年度 |
40.8% | 1,714名 /4,927名 |
34.8% | 2,300名 /4,903名 |
46.9% | 12.1% |
24 年度 |
41.7% | 1,973名 /5,215名 |
37.8% | 2,302名 /5,027名 |
45.8% | 8.0% |
23 年度 |
40.7% | 1,822名 /5,025名 |
36.3% | 2,738名 /6,177名 |
44.3% | 8.0% |
22 年度 |
41.8% | 2,229名 /5,661名 |
39.4% | 2,247名 /5,044名 |
44.5% | 5.1% |
21 年度 |
41.2% | 3,050名 /8,172名 |
37.3% | 2,114名 /4,373名 |
48.3% | 11.0% |
4.次年度試験対策
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低層建築物、基準階建築物それぞれのエスキス手順の理解
課題テーマは、低層建築物と基準階建築物の2つに大別することができます。ホテル、事務所ビル等の基準階建築物と、図書館、コミュニティセンター等の低層建築物のエスキス手順は異なります。早期からどちらの手順についても、実践課題を通してマスターすることが必要です。
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矩計図対策
新試験制度において、「梁伏図、矩計図等の構造計画に関する図面から1面程度」出題すると公表されて以来、5年連続で梁伏図が出題されており、矩計図の出題はありませんでしたが、その対策は進めておかなければなりません。
矩計図は、梁伏図に比べて手間のかかる図面です。部材寸法を覚え、納まり等を把握した上で、早い段階から「作図スピード」をあげるとともに、正確な図面を描き上げる能力を身につけることが大切です。 -
記述対策
受験者答案分析から、「記述で合否が決まる」と言っても過言ではありません。記述対策を十分に行うことが合格への絶対条件です。
試験結果
平成25年 | 平成24年 | ||||
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学科の 試験 |
設計製図の 試験 |
学科の 試験 |
設計製図の 試験 |
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実受験者数 | 26,801人 | 9,830人 うち、製図から4,903人 |
29,484人 | 10,242人 うち、製図から5,027人 |
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合格者数 | 5,103人 | 4,014人 | 5,361人 | 4,276人 | |
合格率 | 19.0% | 40.8% | 18.2% | 41.7% | |
最終 | 実受験者数 a | 31,704人 | 34,511人 | ||
合格者数 b | 4,014人 | 4,276人 | |||
合格率 b/a | 12.7% | 12.4% |